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漆という塗料について・近年、漆は大変貴重な資源になりつつあります
 漆(うるし)の木
  • 漆の木は、ウルシ科の落葉高木で、幹や葉を切ると白い汁(樹液)が出ます。秋には、燃えるような朱色になり,葉裏は黄色になって美しく紅葉します。樹液は塗料や接着剤になり、果実からはロウが取れ、昔は灯明にされたりしました。

  • 樹液(原料生漆)の成分は、ウルシオールを主成分として、20~30%の水分,ゴム質,含窒素物,ラッカーゼ(酸化酵素)。

  • ウルシオールがラッカーゼの作用を受けて乾燥します。ラッカーゼの働きが良くなるためには適当な温度と湿度が必要です。条件が悪いと乾かないことになります。

  • 日本産の漆は、ウルシオール、ラッカーゼの含有量が中国など他産地より多く、良質です。

  • 木の幹に筋を付け樹液を採取して精製し、漆器の塗料としての「漆」が作られます。

  • 樹齢10年程経った木でなければ樹液は採取されません。白い汁は空気にふれると酸化して茶褐色に変化します。樹齢12~13年、直径12~13cmの木1本から150g程しか採取出来ません。大変貴重な素材です。

  • 樹液にかぶれる人もありますが、塗料となって塗られ、完全に乾くとかぶれなくなります。

  • 6,000年前の古代遺跡からも漆塗りの器物が出土。4,000年前の鳥浜貝塚からは朱色も鮮やかな櫛が出土しています。又縄文時代に石の矢尻を木の枝に付ける時、接着材として使われています。「日本書紀」には日本武尊(やまとたけるのみこと)が弓に赤く紅葉した木の汁(漆の汁)を塗った〟と記されています。織田信長,羽柴秀吉以来の戦国時代、鉄砲の錆止めにも使われ、江戸時代においても漆は会津藩などの重要な産物でもありました。

  • 明治の初期には漆の採取を生業とした人達は全国で1万人~2万人とも言われていましたが、近年は激減、10年前でも100人足らずとなり、現在は益々減少し30人足らずになっています。

漆掻きをしている人(参考資料)

  • 岩手県浄法寺 20人程,茨木 10人以内、数人?
    岡山(林原 2人,徳島 1人)

  • 国産漆は岩手県浄法寺など数ヵ所で産出するのみで、高価です。一般的に使われている漆は輸入品で中国産がほとんどを占めています。国産漆は2~3%しかありません。

 塗料としての漆

  • 漆は永遠の塗料であるといえます。
    • どんな化学塗料にも勝る優れた塗料です。完全に乾くと化学塗料よりも丈夫になります。化学塗料は風化しますが、天然の漆は風化しません。先にも紹介したように6,000年前の漆膜が今に残っています。

    • 塗膜は独特の光沢があり、ぽったりとした肉持ち、温か味のある深い色合いを持っています。「漆黒」という言葉があるように黒漆で塗られた表面は深みの有る美しい黒色となっています。

    • 塗られた漆が乾く時には水分が必要不可欠のもの。湿度のある日本の風土に合ったものといえます。

    • 漆は日本、一部のアジアでしか産出せず、欧米では生育していません。欧米などと日本では気候風土が違います。しっかり作られていない漆器は、乾燥した欧米ではそのまま置いておいても使っても、湿度の違いが大きいので木地が変形し塗膜が剥れたり痛むことがあります。

 木と漆

 自然の木と自然の素材「漆」。この二つの物がお互いを引き立て合って漆器が生まれます。

人類発祥の頃より、人間の生活に限りない恩恵を与えてきた木は、切られてからも周りの環境により水分を吸ったり、出したりしています。その上に塗られた漆は、木の中に深く浸透し、塗られて良く乾いた後も塗膜の中で酵素 (ラッカーゼ)が生き続けています。

漆の浸透力によって木の器はより堅牢になります。その上生漆の拭き漆の場合には、漆が塗られた時の濃い茶褐色から次第に透明度を増して木肌が透けて見えてきます。その特質が、木肌を温か味のある美しい色合いにしていくのです。